DOVE、再び。~2019ライブ&機材レポート
「伝説の・・・」
「幻の・・・」
そうした言葉があまりにふさわしい日本の3ピース。
DOVE。
1987年CBSソニーオーディショングランプリ受賞後、1989年、1stアルバム『DOVE』にてCBSソニーよりデビュー。
その後、2枚のアルバム『Parallel Trip』(1990)、『WATER PUZZLE』(1991)を発表。
1992年、3枚のアルバム、わずか3年の実働期間の後、活動を停止。
そして、デビューから30年の時を経た2019年、突如アナウンスされた復活ライブ。
秋葉原クラブグッドマン。
5月下旬の週末、リラックスした中でスタートしたリハーサル。
各楽器のサウンド・チェック後、いよいよ3人のアンサンブル。
・・・!!
あまりにハイ・テンションな音。
「ブランク」、「懐かしの」、そうした言葉は、3人のパフォーマンスの前に霧散します。
ベース&ボーカルのYanz/山本秀史。
近年では、face to aceでのサポート・ベーシストとしても、ここクラブグッドマンに立つYanz氏。
現在、Yanz氏は、ATELIER Zの5弦ベースを愛用中。
ステージ上のベースアンプとして、この日は会場のGallien Krueger『800RB』をセレクト。
デビュー当時、業界関係者の度肝を抜いたベースでの“付点8分ディレイ”フレーズ(『LANDSCAPE』)は、「元々ギターだったから。」とYanz氏。ベース用のエフェクターを“限定しなかった”、柔軟な発想から得られた技だった、と。
そのディレイの他、この日も要所で使用された印象的なモジュレーション系サウンドを含む現在のエフェクト・セッティングは、足元に置かれたLine6『BASS POD XT LIVE』1台にスタンバイされています。
そして数々の大物アーティストとの共演でも実証されているベーシストとしての力量に加え、face to ace/ACE氏から「上手い」と評されるYanz氏のボーカル。この日、ベース・アンプの前にセッティングされたマイク・スタンドの前に、ふたたびDOVEのボーカリストとして立ちます。
そのボーカル・マイク。
過去のライブでは、Shure『SM58』、今はもう生産されていないbeyerdynamicのリボン・マイク等を経て、最終的にShure『SM57』にウィンド・スクリーンを装着したモノを用いていたYanz氏。
「声量があるので、コンデンサーマイクだとマイクが負けることがあって。」(Yanz氏)
選択肢が狭まる中で、音質的にもう少し改善できないか、と、事前のリハーサルで試奏し、選んだマイク、HEiL『PR35』。
「全然違う。一枚ベールが剥がれた感じ。歌いやすい。」(Yanz氏)
当時にはなかった、通常のボーカル・マイクよりもはるかに大きなラージダイアフラム・カプセルが内蔵される新世代マイク。
ハイトーンが連続する楽曲等、「DOVEは、しんどい曲が多い(笑)」ゆえ、サウンドのみならず、その「歌いやすさ」も嬉しいプラスアルファに。
舞台上手。
オリジナル・メンバーの後藤孝顕に代わり、この日の大役を務めるギターのKATO/加藤健一。
DOVEの出身地でもある地元、広島をベースに、作曲家、演奏家として活躍するKATO氏は、2台のアンプを使用するステレオ・セットで臨みます。
極めて高いテクニックを持つギターのKATO氏、長年の愛機であるオリジナル・STEINBERGER/スタインバーガー。
足元には、BOSS『GT-100』。
以前は大型のラックを組まなくてはならなかったサウンドも、「今はこれで。」
そしてギター・アンプとして2台のRoland『JC-120』。
ステージ上でのモニタリング性の配慮から、変則的な横置きで設置されました。
そのJCの上には、『E-BOW』の姿も確認できます。
そして、舞台中央。オリジナル・メンバー、ドラマー・MIKI/未来淳史。
変わる事のない、低く構えられたセット、高めのスローン。
変化に富む打楽器セットも健在です。
ドラムの3点セットに加えられるアイテム群。
カウベル、タンブリン、青いスプラッシュ、ティンバレス、グロッケン(鉄琴)・・・。
そのセットを前に、見る者に何かを伝えるダイナミックなプレイスタイル、縦横無尽なスティックさばきを見せるMIKI氏。そして、特異なスタイルだけではない、音楽的な素養の高さ、確かなルーディメンツ。
「バンドに目覚める前は、ブラスバンドで打楽器をやっていた。」(MIKI氏)
そこで培われた高い基礎技術。
そして、数多のドラマーと共演してきたYanz氏をして
「MIKIの8ビートは最高!」
といわしめる、天性のグルーヴ。
その3人により、曇りなく繰り出される、見紛う事なき“DOVE”サウンド。
息をのむ“完璧”。
万全のリハーサルを終え、本番までの間、次第に増してゆく観客の列。
開演予定時刻を過ぎてなお、途切れない行列。埋め尽くされた満席のクラブグッドマン・フロア。
暗転。
スタートする、DOVE “SEED”。
2019年、復活のオープニングは、2ndアルバムの1曲目を飾るアグレッシブな『SUICIDE GAME』からスタート。
瞬時にヒートアップするフロア。
刹那、改めて認識される、その高度な演奏力、その凄み。
秀麗な空間系のエフェクト、めくるめく展開で変幻するギター・リフ。
象徴的な付点8分のディレイ・リフや変化に富む音色を交えながら進む堅実なベース。
的確かつ豊富な打奏、圧倒的な打数、かつグルーヴィーに組み立てられるドラム・セット。
そして、明らかに並外れたクラスにある、Yanz氏、真正ボーカリストの“声”。
No,シンセサイザー。
No,シーケンス。
ステージ上の3名のみで繰り出される、エネルギッシュな音の絵画。
昨今の「ロック」という言葉で想起される“ラウド”とは異質の音の“圧”。
それは、さめた眼で俯瞰し、個人の力量をフル・レングスで繰り出す、高純度な“職人の技”。その結晶から成る音の「塊(かたまり)」。
そして、それは“アート”と呼ぶにはあまりにも野性的。
見る者を釘付けにする、絶対無二の3個体。
観客は、息をのみ、動きを止められ、いつの間にかビートと音に身をゆだねる。
そして、20数年の時を経て、観客と喜びを共にするメンバーの姿。
このコミュニケーションは、かつては表出される事のなかった“新たな”バンドの表情か。
アンコール2曲目、『真昼の月』。
DOVE史上初、ピアノを弾きながら歌唱するYanz氏の姿が。
重ねられるMIKI氏のグロッケンの響き。
KATO氏のE-BOWサウンド。
そこから連なる、怒涛のエンディング。
約2時間に渡るドラマ、終演。
DOVE。
記憶されるべき、「日本の」3ピース。
この先も、どこかで、驚きと喜びをわかちあえる場が作られることを。
2019.05.18.
DOVE “SEED”
at Club Goodman
SUICIDE GAME
Insideout
LANDSCAPE
幻想の街
NOTHING
瞳の中で
旅の記憶
ラクダ
LIKE A BIRD
DECAYED WORLD
BRAINWASHING
砂のサーカス
A song for the Happy people
河を見ている
アンコール:
風の指す場所
真昼の月
メンバー:
Yanz (山本秀史 / Hidefumi Yamamoto) Vocal, Bass
MIKI (未来淳史 / Atsushi Miki) Drums, Percussion
KATO (加藤健一 / Kenichi Kato) Guitar
Yanz SNS:
https://twitter.com/yanzbass
■HEiL Sound PR35 / PR30B
■BOSS GT-100
■Roland JC-120
■E-BOW Plus E-BOW
■ATELIER Z エレキベース一覧
(レポート by S.N.)