イタリア・FATAR/Studiologic本社訪問レポート【Part4(最終回):研究開発・品質管理】
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世界中の鍵盤楽器メーカーが採用する、イタリアFATAR(ファタール)製キーベッド。本社訪問レポートもいよいよ最終回。製品開発、品質管理の裏側を覗き見しちゃいます!
木製鍵盤の裏側に迫る!
FATAR本社は、1箇所に工場、オフィス、研究開発部門が集結しています。
これはNuma Concertをはじめ、各社の上位モデルに採用されている木製鍵盤「TP/40WOOD」で使用する天然木の突き板サンプルです。貼り付けた状態で熱を加えたり湾曲させたりすることで、接着剤の強度や耐久性、突き板の歪みなどを検証しています。
・・・・・・突き板!?
ええ、商品ページ等では「木製鍵盤」という表記を見かけますが、正確に言うならば「木製鍵盤のタッチを再現した」キーベッドがこの「TP/40WOOD」なのです。
鍵盤の核となる構造体は、この木材の比重を再現した樹脂素材が使用されています。
アコースティックピアノと同様の木製鍵盤を採用したK社や、鍵盤の両脇に薄い木材を貼り付けたサンドイッチ構造のR社とは全く異なるアプローチですね。やはり天然木は重量も個体差があり、湿度や温度変化による膨張や反りがどうしても発生してしまうため、出荷時の調整、その後の品質維持の面においてGOを出すことが出来ないそうです。非常に厳しい品質管理を行うFATARならではのこだわり、と言えるでしょう。
演奏時に見える部分に、先ほどの突き板が。もちろん、手にとったときの重量感は一般的なプラスチック製とは全く異なります。木製鍵盤の弾き心地と見た目が見事に再現されているだけでなく、樹脂製鍵盤と変わらない耐久性を持つキーベッド、という訳ですね。
また、クライアントからの様々な要望にも柔軟に対応しています。これはTP/40WOODをベースに新しいエスケープメント(グランドピアノに見られる、押鍵時の途中にあるクリック感)機構を検証しているところです。近日発売される、イタリアの某ブランドの製品に採用されるキーベッドだとか。
ハイテク・ローテク、何でもあり
こちらは「打鍵マシーン(勝手に命名)」。軸上の丸い部分に錘を取り付けることで、様々な強さで鍵盤を弾くことができる機械です。アコースティックピアノのサンプリング時など、均一なベロシティで発音させる必要がある際に使用されます。
こちらも自社製の測定システム。感圧センサーは日本製ですね。
鍵盤の押し込む位置による重さ(抵抗感)の変化を測定します。
横軸が鍵盤のストローク、縦軸が重さ。8mm付近の山がエスケープメント、10mm付近が底ですね。実際のピアノやオルガン等の鍵盤タッチと、自社製キーベッドのタッチを正確に比較・検証することができます。
こちらのボックスでは、高温・多湿など様々な過酷な条件を再現して耐久性のチェックを行っています。
手作り感が半端ないコチラの器具は、輸送時の振動を再現することで製品自体や梱包状態での耐久性をテストするためのものです。
こちらも年代モノの自社製マシーン。数百万回にも及ぶ打鍵テストに合格したキーベッドのみが製品化されます。なかなか面白い動きをするので是非動画でご覧ください。
・・・飽きないですよね(笑)
エスプレッソメーカーも、イタリアの会社には無くてはならない設備です。
epilogue
昼休みには、近くのレストランでランチ。向こう側に見える白い建物がFATARです。食材もワインも、基本的に全て地産地消。イタリアに暮らす人達の地元愛の深さを肌で感じる瞬間です。
地元愛、といえば。大ヒット作「Numa」シリーズの名前の由来となったのが、レカナーティから程近いリゾート地「ヌマーナ」。
アドリア海に面したシローロ山の麓に位置する、風光明媚な街です。晴れていれば向こう岸のクロアチアまで見えるそうですが・・・。
世界中の鍵盤楽器メーカーから絶大な信頼を集める鍵盤メーカー「FATAR」。
最先端の技術を持つ製造工場と、昔ながらの楽器工房の空気が共存するこの不思議な雰囲気、感じて頂けたでしょうか。是非イタリアの鍵盤職人のこだわりが詰まったFATAR/Studiologicの鍵盤タッチで、貴方の音楽を奏でてください!