iLoud MTM 製品発表会レポート(2)~森﨑雅人氏が語る、モニターに求める“音”。
高度なソフトウェア開発を主軸としてきたIK Multimediaから、2013年、突如としてリリースされたスピーカー製品、『iLoud』。
そして、2016年リリースの『iLoud Micro Monitor』で、ここ日本国内でも大きな変革を起こします。
手に入りやすい価格帯、いわば民生レベルの価格帯にある『iLoud Micro Monitor』が、第一線の業務スタジオ、トップ・エンジニア達に導入され始めたのです。
そして2019年。更に高精度な、より高次の業務レベルに対応できるモニターとしてリリースされた本作、『iLoud MTM』。
前回、『MTM』新製品発表会場では、その驚異的なスペックが生まれた背景、製品の意図するところが紹介されました。
◆前回記事>>
『iLoud MTM 製品発表会レポート(1)~新たなる“リファレンス”サウンド from Italy 』
続いて、会場には、マスタリング・エンジニア、森﨑雅人氏が登場。
森﨑氏は、先ごろ、17年間チーフ・エンジニアを務めたサイデラ・マスタリングよりタイニーボイス・プロダクションへ籍を移し、新たなマスタリング・スタジオを立ち上げました。
その新拠点「Artisans Mastering Studio」に『iLoud MTM』の先行モデルである、同『iLoud Micro Monitor』を導入している森﨑氏。
森﨑氏がモニター・スピーカーに求めるもの。
「周波数特性よりも音の反応のよさ、レスポンスのよさです。」
いわく
「音が出る瞬間の立ち上がりと消え際の余韻に演奏のニュアンスの大事なところがあります。そこをきちんと再現してくれることが凄く大事です。」
つまり、それは「演奏が正確にきこえるモニター」である、と。
そして、
「スピーカーを正確に置いて、音のフォーカスがきちんと再現できるようにすることは、一番こだわっているところです。」
新スタジオでメイン・モニターとして選ばれたスピーカーは、『ADAM A7X』。
「みなさんびっくりされるんですけど。」
通常、もっと大きなサイズのスピーカーが選ばれるところ、なぜこのサイズ感のスピーカーが?
当初、新規スタジオの施工が終わった時点で軽いサウンド・チェックを同ADAMの小型スピーカー『A3X』で行ったところ、
「そこそこ鳴りが良かったんですよ。」
そこで、同シリーズのもう少し大きなモデル、『A7X』をセレクトした、との説明。
『A7X』で十分に音の量感が得られる、そんな「鳴りがいい部屋」で新規にスタジオをスタートされた森﨑氏。デスク上にプラスで設置するスモール・サイズ・モニターとして『iLoud Micro Monitor』を選びます。
森﨑氏がスモールモニターに求めた条件。
「歌とオケ(インストゥルメンタル)のバランスが正確に確認できるもの」
「民生機の再生環境に近い製品、それでいて高品質なもの」
現在「Artisans Mastering Studio」で、『iLoud Micro Monitor』は、ご自身の確認の為のみならず、スタジオのメインモニターの音量感に慣れていないクライアントさんに「A7Xの大きく、精密すぎる音」ではない「普段の音量感で確認頂く」際にも活躍している、と。
例えば、複数の方が立ち会うマスタリングの作業では、「ボーカルとオケのバランス」を比較、判断してもらう際にも、『A7X』ではなく『iLoud micro monitor』で聴いて頂く、と森﨑氏。民生機的なサイズ感の方が、多くの方が判断しやすいのだと。
導入に際して『iLoud Micro Monitor』を試聴した際、
「ボーカルの質感がよかった」
「低域の再現性に余裕があった」
そして「置き方を工夫すれば、もっと追い込める」と確信。
実際、『iLoud Micro Monitor』は、設置に関して、
「シビアに追い込めば、いくらでも良くなるモニターです。」
と森﨑氏。
自身の『iLoud Micro Monitor』のデスクへの設置に際して
「セッティングをリコールできる様にデスクの左右、前面からの距離を決めて、朝晩いつも計測してしています。作業前に計測してモニターをチェックして、作業が終わったらまら計測して。」
森﨑氏の仕事道具に対する真摯な姿勢が伺えます。
森﨑雅人氏、iLoud MTMを聴く。
— スタジオで聴いて頂いた、新たなiLoud『MTM』への第一印象は?
「MTMは、ツィーターとウーハーのつながりが非常に良く、フルレンジ2本で鳴っているかの様な印象を持ちました。この構造(仮想同軸/バーティカル・ツイン)だと高域が強いと硬めに聴こえたりするのですが、MTMでは高域と低域が同じタイミングで出ている印象があり、低域の中にきれいに高域が溶け込んでいますね。」
— 普段使用されている『Micro Monitor』と『MTM』のサウンドの違いは?
「Micro Monitorと比べると、MTMはやはり低域の余裕があります。音のフォーカスの精度も、MTMの方が高い印象がありましたね。」
— 『MTM』のDSPのキャリブレーション(音場補正)機能に関しては?
「最高です。便利ですね。私はマスタリング・エンジニアとして、スピーカーの正しい置き方の技術は身に付けましたが、この機能で計測することにより、もっと正確になるのであれば、ぜひその機能は使った方がよいと思います。また、部屋の環境によっては、どうしても右と左の誤差が出ます。そうした場合のモニター・チューニングには相当高度な技が必要になります。ですので、例えばプライベート・スタジオでも、まず、きちんとモニタースピーカーを設置した後、こうした音場補正の機能を使用すれば、効果があるでしょうし、短時間で良い環境を構築できると思います。」
— 実際に『MTM』での音場補正機能の効果を体験してみてのご感想は?
「場合によっては、補正をかけた結果、フォーカスが正確に、シャープになることによって、音が硬く感じられる方がいるのではないかな、と思いました。」
そうした場合には・・・
「音が正確になるのであれば、“音量を下げる”ことが出来るのではないかな、と思います。“音量を下げる”ことで、シャープな音を活かしたまま、スムースなモニタリングをして頂けるのではないか、と考えました。」
正確な音が出るモニタースピーカー、『iLoud MTM』。
スピーカー製造とは異なる部門で培われた技術により生まれた、モニタースピーカー。
第一線のエンジニア達をも納得させる、音を「再現」する為のフル装備。
待ち望まれた、新たなる“リファレンス”、from IK Multimedia, Modena, Italy。
◆IK Multimedia iLoud MTM
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