-時代を超えて求められる別格の真空管サウンド-『NEUMANN U 67』コンデンサーマイクの復刻とその歴史

レコーディング・エンジニアの間では伝説的なマイクとして高い評価を受けるNEUMANN U 67。1960年に発売された真空管コンデンサーマイクで、今なお別格のコンデンサーマイクとして高値で取引されています。NEUMANNでは2018年にU 67 SetとしてこのU 67を復刻したモデルを発売しました。

 

この記事では新しいU 67 Setを紹介するにあたって、U 67やその他のU 67にまつわるマイクの歴史を紹介しています。今なお定番であるNEUMANN U 87 AiもU 67に関係したマイクなのです。それぞれのマイクの関わりや背景を知ることでよりNEUMANNというブランドを理解することができるでしょう。

 

<NEUMANN U 67 Set>

U 67とはどんなマイク?

U 67は1960年に発売されたコンデンサーマイクで、信号の増幅には真空管が用いられています。NEUMANNに限らず真空管を用いたマイクは大型の電源ユニットが必要であり、U 67も例外ではありません。NU 67という型番の専用電源ボックスを用い、電源供給ができる専用のマイクケーブルで接続します。量産品では敬遠されがちなトロイダルコアトランスを搭載したリニア電源が採用されていました。

 

真空管と回路が生み出すサウンドは現代においても他のマイクで置き換えられないほど力強いサウンドで、特にパワーのある男性ボーカルとの相性が良いとされています。男性ボーカルとの相性の良さは真空管増幅のマイクに共通した特徴ですが、U 67は飛び抜けて良く、別格と評価されることが多くあります。

 

<オリジナルU 67(左)とその内部(右)>

 

U 67とU47/U 87の関係

U 67は突然生み出されたものではなく、U 47というマイクの後継機として生み出されました。U 47はU 67からさらに遡ること10年以上、1949年に発売されました。今日の高額なコンデンサーマイクの多くは指向性を切り替える機能を持っていますが、当時はひとつのマイクでひとつの指向性のみ使うことができました。その時代の中にあってU 47は初めて指向性の切り替えを可能にしたマイクだったのです。1本のマイクで単一指向性と無指向性を切り替えることができたため、レコーディングの幅は大きく広がりました。時を同じくして単一指向性と双指向性を切り替えることができるU 48もリリースされていました。

 

その後1951年にリリースされたM 49では電源ユニットから指向性を切り替えることができる「遠隔指向性切り替え機能」が搭載され、1960年にU 47の後継機として生み出されたU 67ではさらに進化し、本体のスイッチひとつで指向性が切り替えできるようになっていました。よくご存知の方は、U 67の外観があるマイクと酷似していることに気がつくでしょう。

 

あの有名なU 87 Aiです。U 87 Aiは同じマイクとしては3世代目で、U 87、U 87 i、その後U 87Aiとなります。初代であるU 87は1967年にU 67の後継機として生み出されたマイクで、増幅方法以外の基本的なコンセプトは同じでした。U 67が生まれた後に真空管に代わる部品としてトランジスタという部品が生み出され、さらに進化してFET(電界効果トランジスタ)となりました。より新しく高性能な部品として、真空管は次々とトランジスタに置き換えられ、U 67もU 87に置き換えられたのです。したがって、U 67とU 87の外観が酷似していることは必然なのです。

 

<左からU 47/M 49/U 67/U 87/U 87 Ai>

完全に復刻された製品「U 67 Set

U 47から受け継いだNEUMANNのスタンダードの役割をU 87に引き継いだU 67。しかしその類まれなるサウンドをレコーディング・エンジニア達が再び求め始め、1992年、U 67は一時的に復刻生産されました。この1992年に復刻されたU 67は、オリジナルU 67よりもやや明るい音に調整されていました。また、電源ユニットもオリジナルのNU 67と異なり、NU 67 Aと呼ばれる電源ユニットが使われていました。

 

その後もU 67を求める声は多く、2018年、遂にU 67はU 67 Setとして再販売され始めます。U 67 Setは1992年に復刻されたU 67よりもさらにオリジナルに近いサウンドが与えられました。当時の文書に沿って丁寧に設計、再現されており、特定の条件はありますがオリジナルU 67との互換性もあります。

<グリルと指向性表示以外ほぼ同一のオリジナルU 67(上)と復刻されたU 67(下)>

 

例えば、新しい電源ユニットNU 67 VはオリジナルU 67に使用することができます。また、真空管EF 86は条件はありますが、新旧問わず使用することができます。このように、U 67 SetのコンセプトはU 67そのものであるため、プロが聞いてもオリジナルとの差がわからないほどの仕上がりになっています。

<オリジナルの電源NU 67(右)と最新の電源NU 67 V(左)>

 

カプセルも当然オリジナルU 67と同じくK 67カプセルが使用されています。このK 67カプセルは当時のU 67はもちろんのこと、U 87を経て現行のU 87 Aiでも使用されているものです。NEUMANNのサウンドを司るマイクユニットと考えて良いでしょう。

<新しいU 67にも使われるK 67カプセル>

 

U 67 Setは大量生産できるマイクではありません。使用される真空管EF 86は技術者によって計測、選別されたものが使用されています。また同様に、電源ユニットNU 67 Vのトランスなども、選別して使用されています。

<選別されたEF 86真空管が使用される>

 

U 67 Setを組み立てる技術者はわずかに3人しか許されていないそうです。特別に厳選されたパーツを用いて、選ばれた技術者が少数のみ生産できるマイクがU 67 Setなのです。この高価なマイクは、専用のハードケースに収められて顧客のもとに届きます。

<U 67 Setを保護する専用ハードケース>

 

スペックだけで見れば耐音圧114dB(PAD OFF)、等価ノイズ17dB-A、S/N比は77dBと、近年のマイクと比較すれば決して良いスペックではありません。しかし、このU 67というマイクはスペックで比較するものではないということが、その音を聞けばすぐにわかるでしょう。

 

伝説でありながらも、そのサウンドはスペックと音が保証されたものが、U 67 Setとして購入できるのです。ビンテージでは状態の差がありますが、U 67 Setは納期も長く高価ではありますが、新品なのです。U 67は、もし音を聞く機会があったらぜひ体験していただきたい伝説的なマイクなのです。U 67 Setであっても、それは当時の音と同じです。時代を超えて求められる別格のサウンドを、味わってみてください。


 

「当時のU 67 とまったく同じ仕様に作られたオリジナルマイクロフォン」

Neumann / U67 Set (国内正規品・3年保証)


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