安心してステージボーカルに使える、ダイナミックマイクのようなコンデンサーマイク『NEUMANN / KMS 104/KMS 105』
世界的に最も有名と言って過言でないNEUMANNの代表的なマイクはU 87 Aiというコンデンサーマイクですが、ステージでも使えるハンドヘルド型マイク(手で持つマイク)もリリースしていることはご存知でしょうか。
この記事ではNEUMANNがリリースするハンドヘルド型コンデンサーマイク、KMS 104とKMS 105について紹介しています。
<左からKMS 104 NI/KMS 104 BK/KMS 105 NI/KMS 105 BK>
ステージ用ボーカルマイクとしてコンデンサーマイクが使えるのか
ライブハウス等のステージで使われるマイクは、そのほとんどがダイナミック型のマイクです。これに対しNEUMANN KMS 104/ KMS 105は、形こそライブステージに適したハンドヘルド型ですが、その内部構造はコンデンサーマイクです。ライブを多くこなすボーカリストにおいて、コンデンサーマイクがステージボーカルで使用できるのか、興味はその1点ではないでしょうか。
結論的にはステージでもコンデンサーマイクは使用可能です。ただし、どんなマイクでも、どんなシチュエーションでも使える訳ではなく、一定の条件を満たすことで、ダイナミックマイクよりもクリアな音が得られるコンデンサーマイクを使用することができます。使用するための条件こそが、KMS 104/KMS 105の特徴そのものなのです。
<KMS 104/KMS 105はステージ使用を可能にしたコンデンサーマイク>
高いハウリング耐性・高い後方除去率と周波数に依存しない指向特性
ライブステージでコンデンサーマイクが使用されないひとつの理由は、必要ない音もマイクで拾ってしまうという理由です。コンデンサーマイクは基本的にはレコーディングスタジオに特化されており、ダイナミックマイクよりも繊細できらびやかな高域が特徴ですが、ステージ上で使うと目的以外の音も一緒に収音してしまうのです。簡単に言えば、通常のコンデンサーマイクをステージで使用するとハウリングしやすいのです。
ハウリングとは主に演者の足元にあるモニタースピーカーの音がマイクに再入力されることで発生します。よって、マイク後方の音がマイクに入らなければハウリングしにくくなります。KMS 104/KMS 105は一般的なコンデンサーマイクよりも後方の音を拾いにくい設計がなされており、ハウリングに対し高い耐性を示します。
以下の図はポーラーパターンと呼ばれる、どの方向の音をよく拾うかを示した図です。円が大きいほどよく音を拾い、0度が正面、180度が真後ろです。180度方向の線がかなり中心に寄っている、つまり後方の音を拾いにくいことがわかります。
<KMS 104のポーラーパターン、背面の感度が弱いことがわかる>
さらにマイクの持つ指向性が周波数によって左右されないという特徴を持ちます。スタジオ用のコンデンサーマイクは音の無い場所で使う前提なので、周波数によって指向性が変化するものが多いのですが、KMS 104/KMS 105は低い音でも高い音でも前方の音を中心に収音するため、ハウリングに弱い帯域というものが存在しないのです。
超至近距離に最適化された高い耐入力音圧と調整された低域
一般的なコンデンサーマイクは、ボーカルに使用する場合は20cm程度の距離を開けることが基本とされていますので、ライブステージのように超至近距離で使うと様々な問題が発生します。
ひとつは耐音圧の問題で、超至近距離で歌うと多くのコンデンサーマイクでは音が歪んでしまいます。どの程度大きな音に耐えられるかは耐音圧(dB SPL)という数値で示され、スタジオでの使用であれば耐音圧130dB SPL前後であれば問題ありませんが、ライブステージでは不十分と言えます。ライブステージでダイナミックマイクが多用されるひとつの理由として、ダイナミックマイクの方が耐音圧は高い数値を示すことが多いという理由があります。
<スネアドラムの至近距離録音にも耐えうるスペックを持つ>
ところがKMS 104/KMS 105はダイナミックマイクに迫る超高耐音圧設計で、150dB SPLというスペックを誇ります。150dB SPLはNEUMANNの中で最も高い数値であり、市場を見回してもKMS 104/KMS 105を超える数値を示すマイクはほぼ見当たりません。超至近距離でも歪みを気にせずワイルドなボーカルパフォーマンスを行うことができるのです。
<まるでダイナミックマイクのように気兼ねなく大きな声を出せる>
もうひとつの問題は、周波数特性です。一般的なコンデンサーマイクは至近距離に最適化されていないため、近い距離で使うと近接効果という現象により低域が強くなりすぎてしまうのです。
KMS 104/KMS 105は近接効果を前提としており、回路に低域ロールオフ・フィルターが搭載されています。低域ロールオフ・フィルターにより、近距離で歌ったときにちょうど良い音になるのです。
<KMS 105の周波数特性。至近距離でちょうどよくなるように調整されている>
加えて高域の特性がステージボーカルに最適化されており、音量を抑えめにしてもボーカルがよく聞こえる様になっています。結果的に音量をあげずに済むために、さらにハウリングが起こりにくくなっているのです。
ダイナミックマイクのように使えるコンデンサーマイク
その他、ステージ使用に耐えるために必要な堅牢な筐体も特徴のひとつです。ダイナミックマイクよりも複雑で繊細な回路はメタル製のハウジングで強固に保護されており、グリル部分も硬化スチールが採用されています。もちろんグリル部には風(吹かれ)や汚れを防ぐポップガードが内蔵されているため、ステージでも気兼ねなく使用できます。
さらにプロライクな特徴として、インピーダンスが低いということが挙げられます。ステージ音響ではPAコンソールまでの距離が長く、レコーディングスタジオよりも長いケーブルが必要になります。当然ノイズの影響も大きくなりますが、この時に、伝送可能距離に大きく影響するのがマイクのインピーダンスという数値です。KMS 104/KMS 105ではインピーダンスが50Ωと極めて低く押さえられているため最大で300m程度の長距離伝送に耐えることが可能なのです。
<回路を守る堅牢なメタルボディ>
ライブハウスPAオペレーターに相談の上使用しましょう
紹介したように、コンデンサーマイクの音質を持ちながらもまるでダイナミックマイクのようにステージで気兼ねなく使用できるのがKMS 104/KMS 105というマイクです。なお、KMS 104とKMS 105の違いは指向性のみ。KMS 104がカーディオイドパターン、KMS 105はさらに狭いスーパーカーディオイドパターンを持っています。ハウリングにより強いのはスーパーカーディオイドパターンのKMS 105なので、 狭いステージが多い場合はKMS 105を選ぶと良いでしょう。
KMS 104は指向性が広いがゆえの自然なサウンドが特徴です。ステージが広い、イヤモニ使用でハウリングしにくいなど、入念なリハーサルを行うことができる場合はKMS 104を選ぶと良いでしょう。また、KMS 104 PLUSはKMS 104の派生モデルで、低域の特性が調整されており、女性ボーカルに適したモデルとなっています。
<KMS 104(上)とKMS 104 PLUS(下)の周波数特性>
いずれにせよ、当日いきなり持ち込みでは準備ができず使用できない場合も考えられます。KMS 104/KMS 105をライブハウス等に持ち込む場合は、必ず事前に連絡しておきましょう。もちろんご自宅のレコーディングでも使用でき、NEUMANNサウンドを堪能することができます。3機種ともにニッケルとブラック仕上げがあり、専用のセミハードケースが付属します。
<リハーサルやライブに便利な専用のセミハードケースが付属する>
ライブでも、自宅録音でも、ボーカリストが縦横無尽に使えるNEUMANNを手に入れてみてはいかがでしょうか。
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