機材の談話室:Rupert Neve Designs篇 その1~「Portico と Shelford」

渋谷 パワーレックが取り扱う「録音/制作用プロ機器」の話題で、パワーレック・スタッフとちょっと深めのおしゃべりをして頂いた人々とのトークセッションの記録、シリーズ『機材の談話室』、始めます!

今回のテーマはこちら!

アウトボードの話題となれば、必ずその名が出てくる、伝説の人、Rupert Neve / ルパート・ニーヴ
ニーヴさんは、これまで、いくつものブランドに関わってきましたが、現在は、ご自身の名前を冠した『Rupert Neve Designs』社で、今もなお、製品開発を続けていらっしゃいます。
今回から2回に渡り、現代のNeve、『Rupert Neve Designs』製品への人一倍強い愛情を持った2人のトークセッションの模様をお届けします!

まずは、話題の“あの”製品からトークのスタートです!

■機材の談話室 Rupert Neve Designs セッション:
2017年1月某日 at 渋谷某所 / プロ音響機器輸入代理店:S氏 x パワーレック・スタッフ:N


PowerRec N: まず、『Shelford Channel』のリリース(2016年発売)により、Rupert Neve Designsには、『Portico II Channel Strip』『Shelford Channel』、2つのチャンネル・ストリップがラインナップされることになりましたね。Rupert Neve Designs の製品をいつかは自分でも、と思い続けている、“いちファン”としては少し困ったことになった訳ですが(笑)、改めて「白(Portico)」と「黒(Shelford)」、それぞれの製品の方向性の違いを振り返ってみましょうか。

代理店 S氏: 現在のニーヴさんのブランド、Rupert Neve Designs では、これまで、ヴィンテージNeveのレプリカをしましょう、という発想では製品開発をやってきませんでしたよね。実際、『Portico II Channel Strip』は、Rupert Neve Designs以降のPorticoシリーズを総括したようなチャンネル・ストリップで、とてもモダンな回路の製品ですよね。

いずれも名作、上段:『Portico II Channel Strip』、下段:『Portico II Master Buss Processor』

PowerRec N: 確かに、当初からPorticoシリーズは、いわゆるヴィンテージNeveを意識させないサウンド・キャラクターで突き進んで来ましたよね。私も、『PorticoII Channel Strip』の発売当初に初めて音を聴いた時、これまでの『Portico』を更に一歩推し進めた感の、純度が高い、とにかく突き抜けたサウンドが出てきた事に驚きました。加えて、考え抜かれた各セクションの機能にも深い感銘を受けましたね。

代理店 S氏: 本当に、『PirticoII Chanel Strip』は、ひとつの完成形ですよね。そして、モダンなサウンドでありながらも、やはり作っている人、ニーヴさんの決める音ですので、出てくる音には、Neveサウンドのカラーがあって。モダンな中にある、特有の甘い感じ、それが『Portico』の魅力のひとつだと思います。

PowerRec N: そうです、そうです、モダンだけれども、冷たく無いんですよね、『Portico』の音は。そこはかとなく暖かい。

代理店 S氏: 一方の、先行してコンソールやモジュールがリリースされていた“黒い方”、Rupert Neve Designsの中では新しいシリーズにあたる『Shelford』は、ズバリ、70年代のNeve 8000シリーズのコンソールモジュール、つまり、1073、1064等を明確に意識しています。サブタイトルにも”A WHOLE NEW VINTAGE”と付けられている通り、『Shelford』は、『Portico』のモダンさに、ヴィンテージ感、“厚み”や“低音感”がまとめられた、本当に「フルレンジ」で「現代のどんなジャンルにも行ける」サウンドになっていますね。

PowerRec N: 遂に、ニーヴさん自らが、自らのヴィンテージに更新を加えた、というわけですね。そんな『Shelford』を一聴してみた感想ですが、一般に“ヴィンテージ感”というと、ちょっとした“なまり感”を期待する向きもあるかと思うのですが、例えば『Shelford Channel』のマイクプリは、“音の速さ”だったり、あるいは“ローの見えやすさ”だったりという、いわゆる“なまり感”とはちょっと違うサウンドですよね。「ストレートに出てくるサウンド」とでもいいますか。これは、白い方、『Portico』でそうだった様に、Rupert Neve Designsの姿勢として、“ヴィンテージ”というキーワードがありながらも、回路面では究めるだけ究めて、理想的なフルレンジのヴィンテージ・サウンドを目指した、それが“黒い方”、『Shelford』、ということなのでしょうか?

代理店 S氏: そうですね、『Shelford』は、例えばマイク・プリアンプのセクションにしても、マイク・プリアンプをずっとやって来たニーヴさんの“集大成”になっている、そう言っても過言ではないと思います。もちろん、マイク・プリアンプは、“いろんなキャラクターがある事が面白い”、という大前提があるにしても、今回の『Shelford』のサウンドは、実際、「誰が聴いても間違いない音」に仕上がっているのではないかと思います。そして、あえて【Neve系マイクプリのひとつ】という枠に『Shelford』を収めたとしても、誰もが納得できる“一番最新のNeveサウンド”です、という事も出来ると思います。

PowerRec N: そうですね、『Shelford』は、本当に守備範囲の広い音をしていますよね。質感は確実に豊かで、懐が深く、そして瑞々(みずみず)しさもある。いわゆる【Neve系マイクプリ】の更に解像度が上がった感じ、でしょうか。ところで、この【Neve系マイクプリ】というキーワード、Sさんはどんなイメージを持っていますか?

代理店 S氏: いわゆる、最近のキーワードにある、「忠実性が高く透明性があるトランスペアレントなサウンド」ではない、1073モジュールに代表されるサウンド、またはその回路設計を踏襲したマイクプリのカテゴリーですよね。それは、「特有の存在感のある音」「暖かみのある音」と言う人もいますね。

PowerRec N: 1073周辺の音は、「太い」「ウォーム」「シルキー」というキーワードでも語られますね。

代理店 S氏: その1073に代表されるヴィンテージNeveは、“フルボディ”と形容できる上質なサウンドですが、一方で現代的なボーカルやリードには”抜け”が足りないとされることもあります。そして、今のNeveである『Rupert Neve Designs』製品は、やはりモダンな機器ですので、例えば、スタジオのヴィンテージNeveで録ったリズムに、Rupert Neve Designs 製品を使って上モノをダビングすると、同じNeveのカラーの中で、綺麗に音を載せる事が出来ると思います。

PowerRec N: なるほど、Neve同士であれば、世代を超えて新旧取り混ぜても、Neve印はNeve印、混ざりも良い訳ですね。ヴィンテージとモダンの相乗効果も得られると。それはいいTIPSをありがとうございます!何chもヴィンテージNeveを用意するのは、欲しい気持ちがあっても(笑)、特に個人ベースでは高い壁がありますが、1~2chのモダンNeveであれば、個人で所有、も十分に考えられますよね!

代理店 S氏: まったくその通りで、個人ユーザーさんこそ、回り道して色々ある「○○風」を手に入れるよりも、少し頑張ってご予算を用意頂いて(笑)、ストレートに、現代のNeveであるRupert Neve Designs 製品を導入される事をお薦めしたいですね。


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次回、“トランス”の話、等々にトークが広がります!→続きはコチラから!

【今回登場の機材群】
Rupert Neve Designs / Shelford Channel
Rupert Neve Designs / Portico II Channel Strip

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