あの “Two Voice” が現代に蘇る!
シンセ界のレジェンドの一人 トム・オーバーハイム氏が直接手がけ、
”自身が認めた物しか出荷しない”というメーカーとしては究極のこだわりを見せている、2ボイス・アナログシンセ「MARION SYSTEMS CORPORATION Two Voice Pro Synthesizer」が遂に日本でも発売致しました!
以下、当社スタッフが徹底解説致します!
故ボブ・モーグ博士やドン・ブックラ氏、デイヴ・スミス氏と並ぶシンセサイザー界のレジェンドであるトム・オーバーハイム氏。その初期の製品に於いて、非常に柔軟な設計と独特のサウンドによって人気を博した傑作シンセサイザーユニットが”SEM(Synthesizer Expander Module)”です。
クリームホワイトに彩られた正方形のパネルを持つこのモジュールは、単体では2VCOのモノフォニック・シンセサイザーとして機能します。インターフェイスは一般的なCV/Gateのため、鍵盤付きのアナログシンセを接続してサウンドをレイヤーしたり、単体のシーケンサー等から演奏したり、といった後の音源モジュール的な使い方が可能な製品でした。
更に、このモジュールを複数並べ、鍵盤付きのケースにマウントしたポリフォニック・シンセサイザーも開発されます。レザー貼りのスーツケース型筐体にSEMを4基搭載した4Voice、同じく8基搭載した8Voice、そして本モデルのオリジナルとなる2Voice等がラインナップ。
キーボードからの演奏情報はキー・アサイナーモジュールによって各ボイスに割り振られ、柔軟な演奏が可能でした。更にプログラマー・モジュール搭載モデルは、全てのSEMに共通のCV(コントロール電圧)を送ることでパラメーターを制御する原始的な音色メモリーを実現していました。
しかし全モジュールのノブやスイッチの位置を揃えておかないとちゃんと機能しないことや、ボイス数が増えるほど巨大化する物理的要因ゆえ、一般ユーザーが気軽に使用できるものではありませんでした。その後、アナログシンセは基板上に全てのパラメーターを電圧コントロール可能なモノシンセを複数並べてレイアウトするポリシンセに進化していくのですが、その過渡期を象徴する製品としてルックス、サウンド共に人気の高いシリーズです。70~80年代の国内外有名グループ・アーティストに使用されていた事でも知られています。
余談ですが、このSEMのボイス構成をベースに製作されたモノフォニック・シンセサイザーにOB-1という製品があります。シンプルな回路のためか、SEMよりも力強さを増した感のあるガッツのあるサウンドと8つの力技音色メモリーが魅力的なシンセで、更に余談ですが某ウォーズの登場人物の命名にインスピレーションを与えたという噂もあったりなかったり(OB-1→オービーワン→オビワn)・・・。
閑話休題。原始的物量投資作戦、力技シンセラインナップの中でも、現実的なサイズとその使い勝手故に、「ポリシンセ」という概念とは異なる魅力に溢れた製品が「2Voice」でした。SEMの横に取り付けられたモジュール”MINI SEQUENCER”がキモで、鍵盤だけでなく8ステップ×2系統のアナログ・シーケンサーによりそれぞれのモジュールをシーケンスさせたり、シーケンスを流しながら演奏したり、といった楽しさ溢れる使い方を可能としたシステムです。このサイズ感と機能性のバランスの良さは絶妙で、開発者本人であるトム・オーバーハイム氏が一番お気に入りのシンセサイザーとして必ず答えているのも納得です。
そしていよいよ、今回発売となった”Two Voice Pro”。基本的なアーキテクチャーはオリジナル2Voiceそのまま、2010年頃より限定生産・販売が行われているSEMリプロダクション2基と鍵盤、シーケンサーを含むコントローラーモジュールで構成されています。
筐体は残念ながらオリジナルの様にケース一体型ではありませんが、オリジナルの雰囲気を受け継いだルックスで、真っ黒に塗られたサイドパネルも実は木製だったりと、存在感・高級感共に納得の出来栄えです。
SEMのサウンドもオリジナル同様の滑らかなサウンドで、最大の特徴であるマルチモードフィルターの切れ味もオリジナルを彷彿とさせます。バンドパスやノッチモードでレゾナンスを上げたニュアンスは積極的に使っていきたいですね。
オシレーターシンクの綺麗な掛かりっぷりも思わずニヤリ。
VCOの波形選択がオシレーターセクションではなくフィルターセクションのミキサー部に配置されている独特のレイアウトもSEMならでは。
ノイズとマルチモードフィルターのコンビネーションも扱いやすく、後述のシーケンサーと組み合わせてリズムマシン的な使い方にも対応するあたり、「シンセサイザー拡張モジュール(Synthesizer Expander Module)」という直球ネーミングの面目躍如です。
2つのVCOのフリーケンシーコントロールが遊星ギヤの同軸ダイヤルでない点が唯一残念な点ですが、部品供給の制約上、現在の製品としては仕方ないところですね。
ピッチ・オクターブをシビアにチューニングする際は、まずは右上の小さなファインチューンノブを12時の位置に合わせてから大きいノブを廻す癖をつけましょう。
そして最大のポイント”シーケンサー”!
このモジュール、出来ることと出来ないこと、そして操作性の設計が絶妙です。今の時代、グラフィカルな液晶ディスプレや直感的なコントロールを配してもっと使いやすく、高機能に設計することも簡単だったと思いますが、そこはあえての7セグメントLEDディスプレイ。限られた情報と小さなボタンをポチポチしながらの操作は逆に創作意欲を掻き立てられます。しかも、最大16ステップのシーケンスやチェインしてのソング作成、ゲート長のコントロールなど、使い込めば実は多機能であることも良いですね。是非じっくり習得して、一見さんでは使いこなせない高度な技をサラリと使いこなす・・・。マニアを自負するシンセ好きはそこに痺れる、憧れるゥ訳ですよ。
外部とのインターフェイスも充実しています。個人的にはあえてMIDI端子は無しで貫いてほしかったところですが(笑)、ちゃんとシーケンサーもMIDIクロックに同期可能です(アナログクロック入力も欲しかったなんて贅沢は言いません)。主要なパラメーターコントロール用のCV/GATEも上面にズラリと用意されており、ピッチは一般的なV/Oct.規格ですからユーロラックとの変態システム構築だってお手の物。
最後に、鍵盤タッチが思いのほか上質なのも挙げておきましょう。ベロシティ&アフタータッチ完備、ウエイト付きのシンセ鍵盤のタッチの良さは、純粋なリード/ベース用シンセサイザーとしての期待にも応えてくれます。
勿論、単純に弾きまくれるポリフォニック・OBシンセが必要な場合は、同じSEMの設計をベースにした「OB-6」をお選びいただくことも可能です。
それにしても、まさかこうした形で、トム・オーバーハイム氏の傑作シンセの再来に立ち会うことが出来るなんて数年前までは思ってもみませんでした。しかもマニアックなモジュールと美しいポリシンセから選べる状況なんて!
残念ながら”Oberheim”という商標と力強い音符のロゴは現在別企業が保有しているため、公式な”Oberheim”ブランドのシンセサイザーと呼ぶことはできませんが、トム・オーバーハイム氏の設計理念がダイレクトに反映された本モデル、その生い立ちとサウンドは純血そのものです。ちなみにマリオン・システムズというブランド名は1987年にオーバーハイム氏が設立した会社で、娘さんの名前に由来いるというのは微笑ましい豆知識。
往年のOBシンセサイザー好きな方は勿論、益々盛り上がりを見せるユーロラック・アナログモジュラーシステムの可能性を拡張させてみたい方にとっても見逃せない一台です。是非鍵盤堂の店頭にて、じっくり”対話”してみてください。
◆MARION SYSTEMS CORPORATION Tom Oberheim Two Voice Pro Synthesizer
ショッピングページはこちら>>
<取扱いフロア>
■鍵盤堂
〒150-0031
東京都渋谷区桜丘町24-2 第3富士商事ビル7F
TEL: 03-5728-6941
e-mail:kenbando@ikebe.co.jp