『S』の名が再び冠されたGENELEC。~日本で世界初披露された”high-SPL”新製品群[S360,7382]
2018年8月。AES TOKYO会場で発表された、GENELEC社の新製品、アクティブ・モニター『S360』、そしてサブウーハー『7382』。
レコーディング用モニター・スピーカーとしてはあまり取り上げられる事のない“high-SPL”をキーワードとする両機。
果たしてGENELECの狙いは?
まず、サイズ感はニアフィールド~ミッドフィールドの代表銘柄『1032』クラス、10インチ・ウーハーの2way Monitor『S360』。
GENELEC社のオリジンであり、名機として記憶される『S30』を髣髴とさせる、そのネーミング。
バスレフ・ポートは、ボディ底辺の両翼に配され、スピーカーの音場の変化を抑制しながらも、効率的に低域を補います。
MDFによる、高い剛性が与えられたソリッドなボディ、32mm厚のフロントパネル。
そして、GENELEC史上、類を見ない程に深く成形された[DCW]ウェイブ・ガイドは、水平95度、垂直75度の指向性を確保しています。
その奥に配された、1.7インチのチタン製ダイアフラム搭載コンプレッション・ドライバーが、歪みの無い高域を、ニアフィールド・エリアから、10mに及ぶ距離までの間、リニアに音声を届けます。
歪みの無い、Long Throwな = 到達距離の長い音場。
SPL:118dB。
周波数特性:36Hz~20kHz。
「high-SPL」かつ、「低歪み」、そして、十二分な周波数特性は、あくまでもリニア。
GENELEC本社のR&D Director、Aki Makivirtaさんは語ります。
「この『S360』は、小さな『1236』だと思ってください。」
そう、『S360』は、小型ボディでありながら、「ラージ・モニター」に求められる特性を目指し、生み出された製品なのです。
なぜ、GENELECは「小さなラージ」を必要と考えたのか?
それは、歪みの無いモニター音場の創出の為。
どこに?
イマーシヴ・オーディオ(immersive audio)。
特にポスト・プロダクションにおいて、現在、最も進化と深化を求められている“没入感”を聴く為の、モニター環境。
その為に必要な、多数本のマルチ・チャンネル・スピーカー。
「歪みなく、離れた場所でも変化なく。」
マルチ・チャンネルに求められる、モニター性能。
GENELEC社は、そう定義します。
『S360』に併せて発表された『7382』サブウーハーも、同じ目線で開発されました。
15インチのドライバー・ユニットを“3基”。
その並べられたユニット幅分、長尺に設けられたバスレフ・ポート。
超低域を“歪みなく”再生する為のスペック。
昨今、GENELEC社において、大きなラインナップの拡張を見せている[SAM(Smart Active Monitoring)]スピーカー群。
音場に合わせたキャリブレーションまでこなし、最大45chまでのモニター制御が可能となる、先端のモニター・マネージメント・システム[GLM](Genelec Loudspeaker Manager)が具現化する、モニター・スピーカーにおける新たなる潮流。
その“真価”を更に明確にする、今回発表された新製品群。
『S360』、『7382』。
実際に、発表会場での他の製品群と共に構築されたマルチ・チャンネル再生においても、両機は、確かに“歪みの無い”、そして“到達点の長い”音場を実現していました。
これは、「PAスピーカー」的な目線でもあり、マルチ・チャンネル・モニターのみならず、ライブ、フロア等々、大きな音量を想定したスタイルの音楽作品作りにおいても、非常にいい働きをしそうです。
40年以上に渡り、「モニター・スピーカー」を作り続けて来たGENELEC社が提示する、次の時代の“モニター・スタンダード”。
期待しましょう!