[連載]SD-9007サイドストーリー #2 オノ セイゲン&DSD,SACD

サイデラ・マスタリング&レコーディング(以下SDM)で使用する為に産み出されたケーブル『SD-9007』。
“存在を消した”超高性能、そこにある“フィロソフィー”とは・・・?
>>>[連載]SD-9007サイドストーリー #1 オノ セイゲン&SDM,そのツール
2023年にリリースされたHybrid SACD 『Jazz, Bossa and Reflections Vol. 1 / Compiled and Mastered, by Seigen Ono』
名門レーベルVerve Records、そしてBrazil Philipsからの名曲、名演奏群をオノ セイゲン氏がセレクト、マスタリングを施したコンピレーション盤。
そのサウンドは多くの音楽評論家の耳を捉え、リリース後ほどなくして新たな“リファレンス”としてシーンに定着。
そして、いつしか同作と共に謳われ、語られる様になったフレーズ・・・“SACDの復権”。
SONY、Phillips社で開発されたDSD (Direct Stream Digital)規格。そのDSDファイルを収め、パッケージング化する、SACD (Super Audio CD)は、1999年より製品化が開始された。

DSD・・・1bit Audio。
PCM方式:「サンプリング周波数や量子化ビット数で表現」(ex.24bit / 192kHz)
に対して、
DSD方式:「音声信号の大小をパルス波形密度(濃淡)で表現」(ex 1bit / 2.8MHz)
例えるならば・・・
PCM : デジタル写真におけるJPEGファイル・データ
DSD : デジタル写真におけるRAWファイル・データ
DSDで録音された音・・・「コンソール上のそのままの音がする」
PCM方式とは異なるDSD方式の特性は、原音への忠実度、そして生演奏の表現、空気感の再現において圧倒的な優位を見る。
音楽家が生み出す「音楽」を “生み出された瞬間そのままに”記録できるDSDは、録音、マスター素材のアーカイブからリアルタイム配信にまで至る“音質を最重要視”するメディア群において絶大な支持を獲得、確固たる地位を確立してきた。
そのDSDの「音」をそのまま収め、リスナーに届けることのできる未だ唯一のパッケージ・メディア、SACD。
2025年2月某日。
@晴れたら空に豆まいて
題されたイベント・タイトル『音色の彷彿』。
そこに書き加えられる“SACDの復権”の文言。
『STEREO』(音楽の友社)、そして『Jaz.In』(ジャズイン社)、2誌の名を冠して開催された稀有な企画。

そこにオノ セイゲン氏の姿。

オノ氏、音楽評論家・寺島靖国氏、山本浩司氏、そして各誌の編集長2名と共にSACDの名盤、名演奏を聴き進めるイベント。


用意されたSACDプレーヤーは『Esoteric K-05XD』。オノ氏が『STEREO』誌(9月号)において同クラスの中で一番の評価を寄せた国産機種。

そして、会場「晴れたら空に豆まいて」のメインスピーカーMeyer Soundから放たれるその音。

・・・あたかもステージに演者がいるかの様な、“再現”。
会場に居合わせた100名を超える観衆から、楽曲の終わり(演奏の終わり)に自然と拍手が生じる。
会場には『Jazz, Bossa and Reflections Vol. 1』からのトラックも流れた。その制作者であるオノ氏が「制作時のSONOMAからのような音がする」と評したSACDプレーヤー『Esoteric K-05XD』、その背面。


オノ氏が 『Jazz, Bossa and Reflections Vol. 1』制作時に使用した『SD-9007』トランスファー・ケーブルの姿が。
同作制作時のオノ氏のノート:
「スマホにヘッドホンでサブスクを流す、それでも曲と演奏は楽しめる。しかし「音楽を体験する」にはもう少し豊かなものであって欲しい。」
“豊かな音楽”を聴衆に届ける為にオノ氏が会場に持ち込んだケーブル、『SD-9007』。
「僕が思う、今、ケーブルで伝えたい大切なことは電気信号だけではないのです。“音楽が伝わるか?”」(オノ氏)
『Jazz, Bossa and Reflections Vol. 1 / Compiled and Mastered, by Seigen Ono』の制作においてオノ氏が使用したSDMの主要な機器群。
SONY SONOMA DSD workstation
EMM Labs ADC8
EMM Labs DAC8
Custom made analogue buffer amp
GML 8200 Parametric Equalizer (custom)
AMEK System 9098 Stereo compressor
Dangerous Music BAX EQ
GRACE Design m905
SONY SS-AR1
Eclipse TD-508 MK4
ECLIPSE TD-M1
ECLIPSE TD-725SWMK2
SD-9001 Transfer Cable

そして、本作の工程より加えられた新たなSDMカスタム・ケーブル

PCMプロセスの関与のない”DSD” + “アナログ”環境。精緻さが求められるモニタリング環境。
それらの機器を繋ぐ「ケーブル」。

「ケーブルで音が伝わるのは当たり前。LRを間違えないように赤と青にカラーをつける。」(オノ氏)
更に続ける。
「ケーブルは①トランスペアレントなケーブル②ほんの少し色付けをするためのケーブル、大きくそのふたつに分かれます。スタジオにはMOGAMIやCanare他、様々なケーブルそれきがあります。『SD-9007』は①、それ以外は②。」(オノ氏)
— トランスペアレント (transparent):透明な、透き通った
「機器と機器を繋ぐケーブルは、できれば無い方がいい。」(オノ氏)
『SD-9007』— ひとつの理想形の完成。
>>>[連載]SD-9007サイドストーリー #1 オノ セイゲン&SDM,そのツール
オノ セイゲン Seigen Ono:
レコーディング / ミキシング / マスタリング・エンジニア, アーティスト

録音エンジニアとして、82年録音の清水靖晃「案山子」「うたかたの日々」、坂本龍一「戦場のメリークリスマス」、渡辺貞夫「パーカーズ・ムード」(85年)「ELIS」(88年)、加藤和彦、三宅純、ヒカシュー、青葉市子、東北ユースオーケストラ、ジョン・ゾーン、マーク・リボウ、 アート・リンゼイ、ビル・フリゼール、ラウンジ・リザーズ、オスカー・ピーターソン 、キース・ジャレット、マイルス・デイビス、キング・クリムゾン、ジョー・ジャクソン、デヴィッド・シルヴィアン、スティーブ・ジャンセン、など多数のアーティストのプロジェクトに参加。2012年からは映画Blu-ray化の音声トラックのマスタリングも手がける。
また、アーティストとして1984年にJVCよりデビュー(今年40周年)、87年に日本人として始めてヴァージンUK(アーティストとして3枚)、ヴァージン・ミュージックパブリシング(作家として10年)と契約。同年、コム デ ギャルソン 川久保玲から「誰も、まだ聴いたことがない音楽を使いたい」「洋服がきれいに見えるような音楽を」という依頼によりショーのためにオリジナル楽曲を作曲、制作。アート・リンゼイ、ビル・フリゼール、ジョン・ゾーン、マーク・リボウ、フレッド・フリスら、80年代のNYダウンタウン・シーン最精鋭たちが結集した『COMME des GARCONS SEIGEN ONO』は、2019年度 ADCグランプリ受賞。 1993年以来スイス、モントルー・ジャズ・フェスティヴァルに4回、アーティストとして出演している。
SDM / サイデラ・マスタリング Saidera Mastering & Recording:
オノ セイゲン氏により1996年に設立。早期よりDSD/SACDをはじめとするハイ・レゾリューション・フォーマットを手がけ、ハイレゾ・シーンの品質向上、普及に大きな貢献を果たす。近年では映画Blu-ray化のためのマルチトラック・マスタリングをはじめとする映像分野の音声も手がけ、その品質向上に寄与。